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ヴィンテージ コレクション

タグ・ホイヤー スーパープロフェッショナル

ホイヤーは1978年にRef. 844でダイバーズウォッチ事業に参入し、1982年には1000mの防水性を達成しましたが、こうした初期のモデルは全て、それ以前の数十年間に開発されたダイバーズウォッチの伝統的なスタイルを踏襲していました。そうした従来のスタイルのダイバーズウォッチからホイヤーがプロ仕様のモデルへと移行できることを実証したのが「スーパープロフェッショナル」でした。ベゼルが非常に目立つモノブロックケースは、それまでのホイヤーだけでなく、どの時計メーカーが手がけたダイバーズウォッチとも異なっていました。ホイヤーは、ダイバーズウォッチの従来の形状から一歩踏み出すことで大きな成功を収め、20年近くにわたりカタログを彩ることになる様々なモデルを世に送り出してきました。

ダイバーズウォッチの世界では、1000mの防水性を備えた時計を提供するブランドで構成されるクラブのようなものがあります。もちろん、一般のダイバーズウォッチ愛好家がその水深にまで潜ることはまずないでしょうが、時速300キロに到達することができるスポーツカーを開発する技術者のように、この水深で時計を作動させるための技術や構造を実現することは時計メーカーにとって大きな達成となります。そうした想いが、ブランドとして、1000mダイバーズウォッチ クラブに入れるか、入れないかの分かれ目になります。


ホイヤーは、1978年に伝説的なRef. 844モデル(200mの防水性を実現) で初のダイバーズウォッチシリーズを制作し、1982年にはコレクターが「ディープダイブ」と呼ぶRef. 980.023で1000mクラブの仲間入りを果たしました。1960~70年代の1000m防水の時計を見てみると、2つの基本的な構造スタイルがあることが分かります。1960年代に登場した最初の1000mダイバーズウォッチでは、堅牢なケースバックで、クリスタルを外せばムーブメントにアクセスできる分厚いモノブロックケースが採用されていました。もうひとつのアプローチが、従来のダイバーズウォッチの基本的な形状を踏襲し、防水性能を高めるために必要なシールを収納するためにケースを厚くするというものです。「ディープダイブ」ウォッチを制作する際にホイヤーが採用したのが後者のアプローチで、Ref. 844モデルと同じ従来型のケースを使用しながらも、1000mの防水性を達成するためにより厚みを持たせました。   


ホイヤー初のダイバーズウォッチは、1950年代にまで遡ることができる従来のダイバーズウォッチのフォルムを踏襲しています。最初の「ディープダイブ」ウォッチも同じ基本スタイルでしたが、1984年、ホイヤーはこの新しいアプローチで1000mクラブのモノブロック部門に名を連ねることになったのです。「スーパープロフェッショナル」(Ref. 840.006) と名付けられたこの新しい時計は、これまでのホイヤーのダイバーズウォッチとも、おそらくどの時計メーカーのダイバーズウォッチとも異なる外観を持っていました。どの角度から見ても、スーパープロフェッショナルは違って見えたのです。


スーパープロフェッショナルは、ダイヤルに “Heuer” の文字が入った状態で発表され、その後すぐに “TAG Heuer” ロゴが入るようになり、21世紀初頭までホイヤーやタグ・ホイヤーのカタログに長く掲載されることになります。実際、スーパープロフェッショナルは、ホイヤーがヌーベル・レマニアとピアジェの傘下にあったときに発表され、タグ・ホイヤーのカタログの中で好調なセールスを記録し、1999年にLVMHに買収された会社の一部となるのです。

ホイヤー スーパープロフェッショナル

スーパープロフェッショナルは、1984年のホイヤーのカタログに1000mダイバーの後継モデルとして初めて掲載されましたが、この「ディープダイブ」はその後数年間、タグ・ホイヤーのカタログに掲載され続けます。スーパープロフェッショナルには、ビーズブラスト仕上げのステンレススティール製ケースを採用した一般的なモデルと、ゴールドカラーのベゼルを備えたセカンドバージョンの2種類がありました。搭載されていたのは、ETA 2892自動巻ムーブメント。


ブレスレットは、ケースのマットな仕上げとマッチしたものとなっていました。また、2本のスペアストラップ、ストラップ交換ツール、減圧テーブルをセットにしたダイブキットも用意されています。このダイブキットでは、ブルーのポーチか、一般的なブラックのポーチを選ぶことができました。

デザイン

スーパープロフェッショナルのダイヤルと針は、12時位置にトライアングル、3時位置に日付表示、インデックスは6時と9時位置がダッシュで残りがドットという従来のスタイルを継承していました。こうしたパーツは全て、ホイヤーのこれまでのダイバーズウォッチよりもかなり大きくなっていたため、スーパープロフェッショナルのケースもそれに合わせて大きなサイズとなっています。時針と分針は、ホイヤーにとっての新しいスタイルで、従来モデルよりも太くなっています。


スーパープロフェッショナルの興味深い特徴のひとつが、深海でも確実に作動するよう、ケースバックが取り外せない堅牢なワンピースケースとなっている点です。ムーブメントにアクセスするには、まずベゼルを外し、次にインナーリングとクリスタルを外して、ムーブメントとダイヤルに露出させなければなりません。 


なんといっても目につくのがベゼル上の特大のグリップ。それぞれ盛り上がった台形をしており、10分単位で1時間を表示しています。ケース径は43mm近くあり、厚さも14mmあります。

タグ・ホイヤー スーパープロフェッショナル


スーパープロフェッショナルは、2000年代初頭までタグ・ホイヤーのカタログに掲載されていましたが、その間にケースデザインが変更され、わずかに大きく(43mm)、よりスクエアになり、リファレンス番号もタグ・ホイヤーの標準ナンバリングシステムに収まるようWS2110に変更されました。

黒を纏ったスーパープロフェッショナル


スーパープロフェッショナルの中でも最もレアなモデルが、ブラックコーティングを施し、基本的にスタンダードなステンレススティール製ウォッチをフルブラックデザインにしたものです。


ブラックコーティングのスーパープロフェッショナルには、Ref. 843.006のプロダクションモデルと、1989年にアメリカのセキュリティ・ディフェンス・システムズ社と提携して500本限定で作られた初期のプロトタイプモデルの2種類が存在します。最初のプロトタイプにはRef. 840.006が付けられていますが、タグ・ホイヤーがRef. 850.006をこのプロダクションモデルに付けるつもりであったことが資料に残っています。